5月7日(誌面では5月8日版)の『夕刊フジ』に拙著、『1本5000円のレンコンがバカ売れする理由』の紹介記事を掲載していただきました。
ご両親などから経営(農業に限らず)を任されて方向性に悩んでいる方、きれいなパッケージデザインを作ったのに農作物を高く販売できないと悩んでいる方、農作業が長時間労働に偏りがちでなかなか休暇がとれないと考えている方に是非読んでいただきたいと思います。
僕が子供の頃、両親は暮れなどの需要期には明け方の2時にレンコンを出荷しに行ったことさえありました。僕も手伝いに駆り出されていたのでよく覚えています。午前2時は極端だとしても、現在でも少なからずこういうことをしなければならないという方、大勢いらっしゃると思います。
そのことを改善するために、近年流行っているのがスマート農業です。しかし、ハイテク機械を導入して合理化を進めて生産性を向上させる方向性の行きつく先は、終わりのない価格競争です。できる限り安い農作物を安定的に供給できることだけが農業に求められる。そんな農業に、プロの農業者としての矜持は保てるでしょうか?
その代替案の一つが農産物のブランド化であると僕は確信しています。もちろん現在でも農作物のブランド化は叫ばれていますし、これまでも進められてきました。しかし、研究者でもある僕の目から見ると、これまでの大半の「ブランド化」と呼ばれるものは方向性が間違っているとしか思えません。
また、スマート農業が農業者にハイテク機械の購買意欲を喚起させる理由の一つは、汚れることがかっこ悪いという思いでしょう。しかしハイテク機械を導入しても、農業それ自体の「価値」が上がることは決してありません。そこで真価が問われる「価値」とは、ハイテク機械を作る科学技術だからです。
一流の農産物は、これまでもこれからも、泥臭い努力の中でしか産まれることはないでしょう。それはハイテク機械を使って野菜を生産している方でも同じことだと思います。このことを僕は、埼玉県のカイワレプラントでカイワレや豆苗等を作っている方に教えてもらいました。
これまで、日本の農業は、植物の声を聴き、植物と心を交わすような交流を永く続けてきました。それが農業者の核心であり、魂であったのです。そして僕は、仮にハイテク機械を用いた農業であったとしても、一流の農作物が生産される背景にあるのは、農業者としての魂であると確信しています。
これまで3Kとさえ呼ばれてきた、時には汚れて辛い仕事にも耐えなければならない時がある、そんな「『ありのままの農業』こそがスマートだ!」と呼ばれる社会を作らなければなりません(p158から)。
しかし、そんな僕も、「野口農園は凄いぜ!」と経営自慢をできるほどの成果を上げられているわけではありません。まだまだ志半ば、やらなければならないことはいくらでもあります。そのための道標として、自分に課した課題を改めて胸に刻むために書いたのが本書です。
「何としても現状を変えなければ!」と、志と挫折のはざまでもがき苦しんでいる、全ての方々の手に本書が届くことを願ってやみません。
皆様、是非ともご一読ください。
野口 憲一
AMAZON『1本5000円のレンコンがバカ売れする理由』
https://www.amazon.co.jp/…/dp/4106108…/ref=tmm_pap_swatch_0…
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