プレジデントOnlineに拙著『1本5000円のレンコンがバカ売れする理由』(新潮新書)についての記事を載せていただきました。どうぞ下記のURLからご覧ください。
私は、近年流行している、スマート農業のように、機械化を徹底的に進めて生産性を向上させ続ける農業に反対しています。もちろん、この時の生産性というのは、同じ作業に対して一人がどれだけ利益を上げられるのか、というそれ自体を批判しているわけではありません。
同じ仕事であれば、売り上げは高い方が利益が上がるのは当然ですし、それ自体は絶対的に望ましいと思っています。しかし、そこに大量生産大量消費という、時代遅れのモデルが付随しいていることが問題だと考えています。
世の中には日本の農産物は高品質だから、関税を取っ払って市場を開放すれば輸出が促進されると考えている方もいらっしゃると思います。もちろん、日本のマーケットが縮小していく中で海外輸出は重要な手段だと思います。しかし、日本の農産物が高品質なのは、あくまでもこれまで日本の農業を支えてきた農家の姿勢があるからではないでしょうか。
それは日本の農業が植物と対話し、交感するような農業であったのです。これは馬や牛との関係でも同じことだと思うのです。元来、日本では、西洋のように馬や牛などは単純に人間に使役され、支配されるような存在ではありませんでした。互いに心を交わし、愛情を確認し合う存在だったのです。
日本の農産物が高品質な理由は、このような日本農業の文化的性質を受け継ぎ、それぞれの農業者が高い技能を保持しているからこそ成立しているのです。その技能こそが農業者の核心だったのです。ハイテク機械を導入して大量生産する野菜がこれまで生産されてきた高品質な農作物と同じになるはずがないと私は考えています。
ただ、このような言説の殆どは、生産性向上に代わる方法によって経済を回すための方法が提案されてきませんでした。私は、本書で提案した農産物の(ラグジュアリティ)ブランド化が、その代替案の一つになるものと確信しています。
本書は決して(株)野口農園の経営自慢の本ではありません。まだ未読の方は是非ともご一読いただけますと幸いです。
――以下、記事を一部抜粋――
現代日本は飢餓とは縁遠い社会となりました。それどころか、ゼロカロリーや脂肪燃焼効果をうたう食品や飲料が大流行しています。大げさかもしれませんが、この現象は社会が食事からカロリーを摂取するという目的自体を放棄し始めた、人類始まって以来の大変化ではないか、と僕は見ています。
こんな時代にあって農産物に生産性を求め続けるなど、あまりにも的外れではないでしょうか。ゼロカロリー飲料に限らず、そもそもお菓子や酒などは最初から嗜好品です。人はお腹を満たすためだけに食料を摂取するわけではないのです。
プレジデントOnline記事
https://president.jp/articles/-/28811
野口憲一web
http://kenichi-noguchi.com/
野口農園web
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